生活費を渡してくれない場合の対処法
「夫(妻)が生活費を渡してくれない」、「家計を握られていてお金が自由に使えない」 このような悩みは、別居や離婚を考えるきっかけになることが多く、深刻な夫婦間トラブルの一つです。今回は、生活費を渡してもらえない場合の法的対処法や離婚手続きへの影響について説明します。
目次
1 夫婦間での「生活費(婚姻費用)」の扱い
法律上、夫婦は同居し、互いに協力し扶助する義務があると定められています(民法第752条)。この扶助義務の中には、生活費を分担する義務(婚姻費用の分担義務)が含まれています。そのため、たとえ別居中や共働きでも、収入がある(多い)側が一定の生活費を負担することが原則です。
2 生活費を渡してくれないときの具体的対処法
・夫婦間での話し合い
相手方に、なぜ生活費を渡せないのか理由を確認し、家計の状況を整理しましょう。家計簿や通帳を確認し、どれくらいの生活費が必要か具体的に示し要求します。経済的理由(実は失業・減給していた)や家計管理の考え方の違いなど、原因によっては、話し合いで解決する場合もあります。不倫やギャンブルなどにお金をつぎこみ生活費を渡さない、自分のためだけにお金を使いたいなど夫(妻)側の身勝手な理由の場合は、法律が定める離婚事由(民法第770条、詳しくは後述します)である「不貞行為」、「婚姻を継続しがたい重大な事由」、「悪意の遺棄」などに該当する可能性もあるため、後に主張できるよう証拠となるLINEやメールなどのやりとりは残しておきましょう。
夫婦だけでの話し合いがうまくいかない場合は、信頼できる親族に相談してみましょう。第三者が入ることで冷静に話が進みやすくなり、有益な助言や支援を得られる可能性があります。また、悩みを共有することで心理的に負担が軽減されることが期待できます。
・内容証明郵便での請求
相手方が話し合いに応じない場合、内容証明郵便を送付し、正式に生活費の支払いを求めることも有効です。内容証明郵便は、差出日・差出人・宛先・内容を郵便局が証明してくれるため、法律的に有効な証拠となります。
弁護士が代理人として通知を送れば、相手がプレッシャーを感じて支払いに応じることも考えられます。
・別居のタイミング
相手方が話し合いに応じない場合、特に、離婚もやむなしということであれば、別居をして婚姻費用を請求するのも一つの方法です。先述したとおり、婚姻関係が続いている限り、夫婦には生活費を分担する義務があるため、別居中でも婚姻費用の請求は可能です。
しかし、新たに住まいを借りる場合は、引越費用や入居費用、家財道具等の準備など経済的な負担が大きくなります。すぐに部屋を借りることが難しい場合には、実家を頼れるかなど一時的な居住先を検討しましょう。
また、長期の別居は法定離婚事由となる場合があります。こちらが離婚を考えている場合は問題ありませんが、離婚まで望んでいない場合は、相手から離婚を請求されるリスクがあるため注意が必要です。
・家庭裁判所への婚姻費用分担請求調停申立て
当事者同士の話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所の調停手続きを考えます。婚姻中の夫婦の生活費・子の養育費(合わせて「婚姻費用」と言います。)を請求する婚姻費用分担請求調停という手続きがあり、調停委員という裁判所から任命された第三者を入れた話し合いが行われ、主に裁判所が婚姻費用の相場として参考にしている「算定表」を目安にして、夫婦それぞれの収入や子どもの有無・人数によって婚姻費用が決められます。
調停がまとまると、婚姻費用について定めた「調停調書」が作成されます。もし、まとまらなかった場合でも、裁判所が、双方の話し合いを踏まえ総合的に判断し、婚姻費用を決める審判手続きに移行され「審判書」が作成されます。
これら調停調書や審判書は、強制執行の申立てに必要な文書(債務名義)となり、もし、夫(妻)が決定した婚姻費用を支払わなかったとしても、強制執行の申立をすれば、裁判所を通じて相手の給与や預貯金を差し押さえて回収することができます。
3 生活費不払いを理由に離婚できるか
生活費を渡さないことを理由に離婚を考える場合も、まずは協議(話し合い)から始めます。協議離婚が成立すれば、慰謝料や財産分与、養育費などの条件を取り決めて離婚協議書を作成しましょう。離婚協議書は公正証書(債務名義になるため)にしておくと良いでしょう。
相手が離婚に応じなかったり、条件面で折り合いがつかなかったりして、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。この際、上述した婚姻費用分担請求調停も一緒に申し立てることができます。
調停で決着がつかない場合は、離婚訴訟により、裁判所が離婚を認める判決を出すことになります。ただし、離婚を認める判決を得るには次の通りいずれかの法定離婚事由が認められなければなりません(民法770条)。
生活費を渡さない行為は、②「悪意の遺棄」及び⑤「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しうるため、主張・立証が可能かを検討していくことになります。
民法第770条の規定する法定離婚事由
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みがない強度の精神病
⑤ その他、婚姻を継続し難い重大な事由
4 弁護士に相談するメリット
最低限の生活費も渡してくれない夫(妻)は、自己中心的な態度やモラハラ傾向を示す人も少なくありません。その場合、配偶者が単独で直接交渉しても、相手の巧みな反論や感情論でこちらの主張をねじ伏せられてしまう場合があります。
専門家である弁護士に依頼すれば、交渉窓口が弁護士に変わり直接相手とやりとりする必要がなくなります。これまでのように一方的に意見を抑え込まれることもなくなり、精神的負担が大きく軽減されます。
また、弁護士は、どのような証拠が必要か、請求金額は妥当かなど、個々の事案に添った適切なアドバイスをすることが可能であるため、あなたの権利を守る味方になります。
もし、生活費不払いのお悩みやそれをきっかけに離婚を考えておられる場合は、専門家である弁護士にご相談下さい。